ぽぽぽ?(仮)

日々もろもろ。

宗谷岬探訪記 2020年9月

北海道で空き日ができた、丸1日だ。
基本的にライブで(主に)札幌を訪れると、スケジュール的に札幌市内以外に行くことができない。そして札幌市内でできることと言ったらほとんど食べることだけなのだ(時計台観光などは1回目の札幌で済ませている)。これは非常に美味しい。
それは良い。とても良いのだがもう何回やったか分からぬ。そして今回、いつも通りにライブで訪れたのにも関わらず丸1日の空き日ができたのだ。そうしたら友人が言い出した、「宗谷岬行かない??」。

私は即答したよね、「行かないよ!???」(しかも他の友人数人の前で否定したな?)。でも結局のところ、私は行くことになったのです。あるよね、そーゆうこと。私はよくある。あぁ、小樽でゆっくりしようかなぁくらいに考えていたのに、我々は遠く日本最北端を目指すことになったのです。たぶんあんまりやる人いないであろう、札幌から日帰りというスケジュールで……。

7時30分札幌駅発、JR特急宗谷に乗り込みます。これでまずは稚内に向かいます。しかしまぁ、これがまた混んでいる。指定席は満席で、自由席には長蛇の列。何故なら特急宗谷は日に1往復しか出ていない。そして札幌から公共交通機関稚内を目指す場合、選択肢はめちゃくちゃ少ない。新千歳からANAが1便だけ飛んでるっぽいけど(飛んでない日もある)、べらぼうに高い。高速バスとか出てるのかも知らんが調べていないので分からない。今回は道内JR乗り放題だよ券を使用したので……。でもみんな、稚内まで何しに行くんだろう……私もだけど……。

とゆうわけで早朝に出発です。駅弁を買って乗り込み、9時くらいに黙々と食べます。美味しい。北海道はいつだって美味しい。途中いくつもの町と森と牧場を抜けますが、道程はずーっと内陸部。車窓的にめちゃくちゃ北海道雄大ドーンって感じでもないような印象ではありましたが(新千歳空港から札幌までの白樺の林にはいつも北海道みを強く感じる。あとは大昔に網走から釧路に抜ける旅行をしたことがあるのですが、私の北海道大自然イメージってそこ)、通り過ぎたひとつの町のほとんどの家の屋根に煙突があって、あぁここは本当にそういう土地なのだなって思いました。でもその町だけ異様に煙突率が高かったんだよなぁ。今となってはどの町だったのか知る術もないのだけれど。

そして特急電車に揺られること5時間。5時間……、まぁ長距離移動には慣れています。それまで内陸部を淡々と走り続けていた車内にいきなりのアナウンス、「左手に礼文島利尻島が見えます」――寡黙だった車内、いきなりの精神的盛り上がり。かくいう我々も盛り上がる。ルート上初めての海! そして島!! あぁ、あの2島は花が美しく咲くという……。いつか行ってみたいものですね……(こう考えると、本当に世界は広いな大きいなと思う。とてもじゃないが行き尽くせない)。

12時40分、札幌を出発してから5時間10分後、遂に終点の稚内駅に到着。稚内駅は想像の7倍くらいは立派だったし賑わっている。映画館まであるようだ。しかして目的地の宗谷岬はここからバスで50分かかります(爆)。あぁそれなのに、みんな宗谷岬に何しに行くんだい??(人のこと言えない) バス会社さん、臨時バス出して全員収容して運んでくれてまじありがとう。

だけどこの海岸線に沿って進むバス50分の道のりで見た景色が、本当の本当に美しかった。特に岬にほど近い遠浅の鉛色の海で、北国の低い日の光が差して鈍く光った水面に魚が跳ねたあの一瞬の光景は、この旅のハイライトとして終ぞ忘れえないものなのだろうなと思うのです。そこに「密漁禁止」って看板が等間隔で立ってたの超絶シュールだったな……。

そして14時10分。ついに目的地、日本最北端の地・宗谷岬到着。すごい! 何があるわけでは無い、あのTVとかで見たことある「最北端の地」ってモニュメントが建ってるだけなんだけど! 目の前に横たわる見渡す限りのオホーツク海はどこまでも寒々しく(9月なのに)、底なしの鉛色なんだけど!! あるいはもうほとんどそれだけの世界なのだけれど、異様な盛り上がりを見せる我々……最北端テンション。きゃーきゃー写真を撮り合うし、展望台みたいなところの鐘とか鳴らしちゃうし、エゾジカと目が合った。すごい剣呑な顔された、シカに。

しかし我々にはあまり時間が無いのです。宗谷岬から稚内駅への終バスは14時55分発(早)です。それを逃したらゲームオーバーです。いそいそとまた臨時バスに乗り込み、45分前に来た道を戻ります。そしてこれも逃したら試合終了の帰りの特急電車は17時47分発です。微妙に時間がるので、こちらも旅の発起人の発案で日本最北の水族館であるノシャップ寒流水族館に向かいます。まぁ水族館としては特筆すべきことは無いのですが(無いのかよ)、そこからほど近いノシャップ岬はちょうど夕暮れで美しく、しかし天気の豹変で降り出す9月の雨とそれに伴い吹きすさぶ強風は完全に冬のそれで、本当に厳しい土地なのだろうなぁと想像したのです。
(だけどこないだブラタモリで、オホーツクの北方民族にとっては北海道北岸は南の緑の地だったと聞いて、北には北がある……と思った次第)

そうして我々は迫りくる夜の闇に呑まれながら、手早く駅の売店で帰路の食糧(途中での補給網が完全に断たれているのでこれは死活問題)と心ばかりのお土産を買い込むと、帰りの特急に乗り込むのです。札幌から稚内までは途中の駅で人の動きはほぼ無かったんだけど、帰りは稚内からほど近い駅でけっこう降りる方々がいて、調べたら温泉地がありました。本当に、国内だけでも巡り切れんよね。

時折の町の灯だけを車窓に映しながら電車は進み、札幌到着は22時57分(多少遅れて23時回ってた気がする。待ち合わせの関係で遅延して、自販機しかない駅でけっこう停車、長時間乗車に飽いた乗客みんなぞろぞろホームに出てた覚え)。時間だけ見ればもうほとんど移動してただけの日なんだけど、その中で観たもの感じた空気が一生一度感がすごく忘れえない1日となったのです。

この2日後に余市のフゴッペ洞窟と、その近くの海岸を訪れたのですが、そこも素晴らしかった。洞窟に関しては完全に一生一度テンションの延長なので別にオススメはしませんが(しかも今はコロナの影響で洞窟自体には入れないし、じゃあそれで何があるかと言われればほぼ何も無い)、あの海岸の原風景は鮮やかに心に刻まれているのです(海岸だってただひたすら海と砂浜しかないんだけど、そこにはすべてがあったんだナァ)。その海は見知った色の青で、空はきちんと夏の色だった。小さな川が砂浜を割いて海に流れ込んでいて、そのわずかな流れに阻まれて我々はそれ以上には進めなかったのだけれど、その流れを軽々と飛び越えて対岸に舞い降りた1羽のカモメさんがめちゃくちゃ羨ましかったんだよなぁ。そんな、一生一度の旅の思い出であった。