全てを呪う前に、
心と体がバラバラになって意味を失う前に、
土へ還ろう
と、彼は歌った。
眠れない人々が
街を泳ぐけれど
溺れているようだ
俺は泣いているのか
どうしてこんなに
ボロボロなんだ
どうして毎回
ボロボロなんだ
続けるだけじゃどこにも辿り着けない
感動は希薄になっていく
きっと一人になって
一人の未来について
考える時なのさ
だから、真っ白い家に帰ろう、と彼は歌った。
『アルマゲドン』みたいな派手な帰還はできなかったけれど、泥にまみれて傷にまみれてそれでも誰しもがささやかな幸せに帰れるのだと。
その悲しい物語を、リリースから1年経って、私自身の物語としてストンと落とし込む。出来得るならば、私も希望を提示し続けたかった。試みることで、それがどんなに苛酷なことかを思い知る。だから、私はもう、「早く再開して」なんて口が裂けても言えないんだろう。ただ、傷が癒えるのを静かに待つ。その家から今1度航海に赴く日を、待つ。港を出ないなら出ないでそれはそれで構わないとも、思う。そこは朝日も夕日も、昼の青空もけぶる月夜も、しと降る霧雨も寄せる波も美しい港だから。
だけど先日、『Cry for the moon』を歌う彼の視線の先に、もう1人の彼の影を見たような錯覚に陥った。そうであれば良いと、私は港を遠くに眺める岬の小さな家の窓から祈っている。祈りも通じないなんて、寂しすぎる。私自身がもう2度と、傷つけ合って別れたあいつと同じ道を走れないことを承知しながらも。ただ私は祈っている。
期待など無い
苦しみしかないが
おまえの愛は
俺だけのもの
恐ろしい
許し難い
お前の愛は
俺のもの
時間などない
憎しみが募った
お前の愛は
俺だけのもの、と