ぽぽぽ?(仮)

日々もろもろ。

2024年映画の旅③(仮)

※先に『オッペンハイマー』分だけ公開しておきます。
 9作揃い次第でまた改めて公開します。

ものすごい主観であります。かなり偏った趣味だと思われます。ラインナップ的にも。「2024年に映画館で観た」作品を扱っています。ので、制作年度は準じていないです。また、基本甘口評価でいきたいタイプです。
※過去に感想書き済みの場合は、インスタ画像にあっても割愛してますん。

オッペンハイマー ★★★★★
「物理学300年の集大成が、大量破壊兵器なのか?」――
180分、一瞬も緊迫感が途切れることが無い。それでいてあっという間の180分でもある。役者も素晴らしいのだと思いますが、こういうことを思ったのは本当に初めてなのですが、監督が完璧なまでにすごい。
世界史上、唯一戦争兵器としての核で被爆した国に生まれたものとして、やはり広島・長崎への原爆投下が実行に移されるシーンについては胸を刺されるような思いがあります。果たしてこれは日本人以外が共有できる感覚なのかはまったく分からないのですが、クリストファー・ノーラン監督が史実の中で共有させようとしていることは伝わってきます。「いつか歴史に裁かれる」ということを、おそらくその時から薄々気付いていた。それが贖えない罪であるということを、日本に対してではなく、全世界で生存するすべてに対する罪であるということを。

贖罪は決して叶わないということ、後年称えられたとしてそれは本人のためではないということを表現するという脚本のバランス感覚は本当にすごい(現代ではよく見られるようになった感覚ではありますが、それにしても)。そしてそれは『ゴジラ-1.0』に非常に通じるものがあるなと思いました。あの作品の戦争への語り口に近しく、『ゴジラ-1.0』がアメリカで高く評価された一因は、実際この作品の対と見なされたというのはあると思います。本作はあくまでオッペンハイマーの人生なので、実際的な戦禍の描写はほぼ無いのですが、その戦禍を『ゴジラ-1.0』はあくまでもフィクションのオブラートに包みながら最も苛烈な表現で描いているということが、相補的と見なされたのではないか。そんな気がいたしました。

理論については本筋ではないんですけど、私はド文系ですが趣味で物理学(量子力学相対性理論・物理学史)の本を色々と齧っていたことがあり、その程度のうっすらした知識ですが物語の流れを咀嚼するのにだいぶ役に立ちました(ボーアやハイデルベルクを始めとして、物理学者の名前は半分くらいは分かったので)。アインシュタインも出てきますが、彼が若き日に打ち立てた相対性理論はあまりに有名として、その後の量子力学の発展については「神はサイコロを振らない」と言って最後まで批判的かつ懐疑的であり、そのために物理学の第一線から零れ落ちていったということは知っておいた方がこの映画を観る上でだいぶ理解が早まるのかなとも思いました。
そう考えると、物理学の本を読んでいてもオッペンハイマーの名前って出てこないんです。だから作中でも語られた通り、おそらく「今では物理学者ではなく政治家だ」ってゆうのは本当なんだろうなと感じたのです。彼の政敵との攻防の末にその争いをゼロに帰する人物としてジョン・F・ケネディの名前が圧倒的な破壊力を持ってたった一言語られるということをもってして、それが破格に表される。
IMAXで観ました。IMAXで観てください。座席が延々と揺られる、あれは核の爆発が迫る恐怖そのものでした。そしてその悪夢は――あるいは絶対的な現実は――、最後に明確に視覚化されてこの映画は幕を閉じます。これが、今の私たちが生きる世界です。これが、私たちの物語です。